ステージゲート法が機能しない本当の理由
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- 宮下夏樹
ステージゲート法とは
開発プロジェクトを複数のステージに分割し、各ステージの終わりにゲートと呼ばれる審査を設ける。ゲートではGo・Kill・Holdを判断し、次のステージに進むかどうかを決める。ロバート・クーパーが1980年代に提唱したフレームワークだ。
典型的なステージ構成は以下の通りだ。
- アイデア発掘
- 概念定義
- 開発
- テスト・検証
- 市場投入
理論上はシンプルだ。問題を早期に発見してKillすれば、無駄な投資を防げる。
なぜ機能しないのか
実務での問題は「誰がKillを言えるか」だ。
私の知る限り、上役がKillを宣言した場面をほとんど見たことがない。理由はいくつか考えられる。
- 保身:自分が承認したプロジェクトをKillすることは、自らの判断ミスを認めることになる
- 部下への配慮:担当者が長期間取り組んできたプロジェクトを潰すことへの心理的抵抗
- サンクコスト:すでに投じたリソースへの執着
結果として上役がやるのは「やり直し」の指示だけだ。プロジェクトは延命し続ける。
Killを言えるのは担当者だけだ
逆説的だが、プロジェクトの現実を最も把握しているのは担当者だ。やめるべきタイミングも、担当者が一番わかっている。
しかし担当者は言いにくい。自分が推進してきたプロジェクトを自ら終わらせることへの抵抗、評価への影響への懸念、様々な理由がある。
組織に必要なのは「やめると言える文化」だ
ステージゲートを機能させるには、判断のフレームワークを整備するだけでは不十分だ。担当者がKillを言いやすい仕組みと文化を作り込む必要がある。
具体的には以下のような設計が有効だ。
- KillをネガティブではなくポジティブなアクションとしてReframeする
- Killを提案した担当者を評価する仕組みを作る
- 定期的に「このプロジェクトを今始めるか?」という問いを全員で考える場を設ける
ステージゲート法は意思決定のフレームワークではなく、「中止を言える空気を組織に作る」仕組みとして再設計する必要がある。
所属組織の見解ではなく、個人の意見・考察です。